ヴァニタス
私はクロエさんから差し出されたハンカチを握りしめると、
「死にかけましたよ。

と言うよりも、私から命を手放そうとしたんです」

そう言った私に、
「えっ…?」

クロエさんは訳がわからないと言う顔をした。

私は崖を指差した。

悪魔から逃げるために飛び降り自殺をしようとした、あの崖だ。

クロエさんは私が指を差した方向に視線を向けた。

彼女の視線がそこに向けられたことを確認すると、
「あそこから飛び降りて死のうと思ってたんです。

だけど…武藤さんは死のうとする私を止めた。

あの時、私が命を手放すことを武藤さんが止めてくれなかったら…今の私はここにいなかったと思っています」

私は言った。
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