ヴァニタス
「少し肌寒くなってきたわね」

思い出したと言うようにクロエさんが言った。

「あっ…」

彼女に言われて、私も気づいた。

海の方に視線を向けると、海は太陽のオレンジ色に染まっていた。

いつの間にか、もうこんな時間になっていたらしい。

「夜になるといけないわ。

帰りましょうか」

クロエさんは流木から腰をあげた。

私も彼女のマネをするように腰をあげた。

「さっきも言ったと思うけど、ハンカチは返さなくてもいいわ」

そう言ったクロエさんに、私は先ほど彼女にハンカチを渡されたことを思い出した。

「でも…」

私がハンカチをこのまま持っていたら、クロエさんは困ってしまうのではないだろうか?
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