ヴァニタス
そう思って声をかけた私に、
「ハンカチはまだたくさん持っているから」

クロエさんが返した。

「そうですか…」

私は手の中にあるハンカチに視線を向けた。

隅のところに赤い花の刺繍がある、白いレースのハンカチだった。

「じゃあ、私はもう帰るわ」

そう言って背中を見せたクロエさんに、
「さようなら」

私は言った。

クロエさんの後ろ姿が見えなくなった。

「私も帰ろう」

後少しで日が暮れて、夜になる。

その場から立ち去ろうとした私に、
「果南ちゃん」

聞き覚えのある声が私の名前を呼んだ。
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