ヴァニタス
「盗られる程持ちあわせているものなんかないし、とにかく入りな?」

武藤さんは私を促した後、ドアを開いた。

開いた瞬間、灯油のような匂いがして私は思わず顔をしかめた。

「初めてきたから仕方ないよな。

住んでいるうちになれる」

顔をしかめた私に武藤さんはクスクスと笑った。

「さあ、入って」

「…お邪魔しまーす」

そう言えば、男の人の家に入るのは今日が初めてだと私は思った。

いいよね、今日から一緒に住むんだから。

武藤さんは今日から私の同居人なんだから。

心の中で何度も言い聞かせると、家の中に足を踏み入れた。
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