ヴァニタス
真っ暗なこの部屋に入っているのは月明かりただ1つだけだった。

大切なものを扱うように、武藤さんが私を優しく押し倒した。

月明かりに照らされた武藤さんの顔は青白く、神秘的な美しさを放っていた。

それはまるでよくできた彫刻のようで、私の心臓はさらにドキドキと音を立てて鳴り出した。

武藤さんの手が私の頬に添えられた。

私はそっと、目を閉じた。

怖い?

…ううん、もう怖くない。

好きな人に抱かれるから、もう怖くない。

武藤さんは私のことが好きだから私を抱いて、私は武藤さんのことだから武藤さんに抱かれる。

だから、怖がることなんてない。
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