ヴァニタス
テラスから視線をそらすと、
「あっ…」

灯油のような匂いの元がわかった。

描きかけのキャンバスに、それを支えている木製のイーゼル。

それらの前には古いデザインの椅子。

周りには絵の具が散らばっていた。

油絵の具だった。

この絵の具を使って絵を描いているから、家の中は灯油のような匂いがしていたのだ。

「画家、ですか?」

描きかけのキャンバスを指差した私に、
「趣味で描いている程度だけどね」

武藤さんは笑って答えた。
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