ヴァニタス
思えば、私はいつも武藤さんに守られてばかりだった。

自殺を止めてくれたこと。

悪魔から殴られていた私を助けてくれたこと。

それは私の力じゃない。

武藤さんが私を助けて、私を守ってくれたからだ。

今も武藤さんは自分の躰が危ないのに、私を悪魔から守って、悪魔と戦ってくれている。

赤の他人である私のために涙を流してくれただけじゃなく、赤の他人である私のために声を荒くして怒っている。

「――私は!」

悪魔の方に視線を向けると、私は声を出した。

「あなたのことを好きだって、思ったことは1度もありません」

私の言葉に、悪魔の顔がさらに青くなった。

「――えっ…?」

悪魔がかすれた声で呟いたかと思ったら、驚いた顔で私を見た。
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