ヴァニタス
「――ウソ、だろ…?」

呟くように言った悪魔に、
「ウソじゃありません。

あなたが嫌いです。

私はあなたが好きだって言ったことがありません」

私は言い返した。

「そんな…。

僕が嫌いだって、そんなバカなことがある訳ないだろう…?

僕は果南が好きで、果南だって僕のことが好きで…」

青い顔で呟いている悪魔に向かって、
「私の好きな人は…武藤さん、ただ1人だけです」

私は言った。

「――う…」

悪魔の手からナイフが滑り落ちた。

カチャンと、彼の手から滑り落ちたナイフは音を立てて地面に転がった。
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