ヴァニタス
武藤さんは崩れ落ちるように地面に座り込んだ。

私は彼の目線にあわせるように地面に座って、
「武藤さん、しっかりしてください!

武藤さん!」

武藤さんの名前を叫んだ。

「――うっ、ゲホッ!」

口から吐き出された血が、地面を真っ赤に染めた。

「武藤さん!」

「――果南、ちゃん…」

武藤さんが私の名前を呼んだ。

よかった、まだ意識がある。

「すぐに救急車を呼んで、病院へ連れて行きますから…」

「――死んでくれ…」

その声に視線を向けると、ナイフを手に持った悪魔が私たちを見ていた。
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