ヴァニタス
「どうして私を描こうと思ったんですか?」

そう聞いた私に、
「俺が好きな女の子だから」
と、武藤さんが答えた。

「えっ…」

好きな女の子だからって…。

戸惑っている私に、
「ちゃんと美人に描くから大丈夫だよ。

普段はヴァニタスの絵ばかり描いているけど、似顔絵の方がもっと得意なんだから」

武藤さんはスケッチブックに鉛筆を走らせた。

美人に描いて欲しいなんて、私は一言も言っていないんですけど…。

そう思いながらも、私はスケッチブックに絵を描いている武藤さんを見つめた。

その表情は真剣…と言うよりも、どこか嬉しそうだった。

久しぶりに絵が描けて嬉しいんだろうな。

軽やかに鉛筆を動かしている武藤さんの顔を見ながら、私は思った。
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