ヴァニタス
武藤さんが絵を描いているその時間は長かったような気もするけど、短かったような気もする。

「できた」

武藤さんはベッドのうえに鉛筆を置くと、スケッチブックを私に見せた。

私は完成したばかりのその絵に視線を向けた。

「わあっ…」

繊細なタッチで描かれた私の似顔絵に、私の心臓がドキッと鳴った。

「なかなか美人に描けたでしょう?」

そう言った武藤さんの顔は、運動会で1位を獲った子供のように嬉しそうだった。

「はい」

私は首を縦に振ってうなずいて答えた。

武藤さんは嬉しそうに目を細めると、
「やっぱり果南ちゃんは、俺の天使だよ」
と、言った。
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