ヴァニタス
母は私に歩み寄ると、私を抱きしめた。

その躰は私が思っていた以上に細く、小さかった。

見ないうちに痩せていた母の躰に、私は涙がこぼれ落ちそうになった。

母は私の顔を見つめると、
「おかえり、果南」
と、言った。

「ただいま、お母さん…」

母に返したとたん、私の目から涙がこぼれ落ちた。

母が泣いている私の隣に立っている武藤さんに気づいた。

「初めまして、武藤です」

武藤さんは母に自分の名前を言った後、頭を下げた。

「あなたが武藤さん…」

母は嬉しそうに武藤さんの名前を呟いた。
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