ヴァニタス
それから思い出したと言うように、
「ここだと暑いから中でお話をしましょう?

お父さんも待っているわ」

母に促され、私と武藤さんは家の中に足を踏み入れた。

懐かしい実家の匂いに、私はまた涙が出そうになった。

やっと、我が家に帰ってくることができたんだ…。

「果南か!?」

父が玄関に現れた。

「ただいま、お父さん」

そう言った私に、
「よかった…」

父はホッとしたと言うように息を吐いた。

「2年間心配をかけて、ごめんなさい…」

私は父に謝った。

「いいんだよ、果南が無事に帰ってきたならそれでいいんだ」

父はそう言った後、
「武藤さん、ですよね?」

武藤さんに視線を向けた。

「初めまして、武藤です。

果南さんと結婚を前提におつきあいをしています」

武藤さんはさっきと同じように自分の名前を言った後、頭を下げた。
< 315 / 350 >

この作品をシェア

pagetop