ヴァニタス
だけど、両親に武藤さんを認めて欲しかった。

自分のことを投げ出して、私を支えて守ってくれたこの人のそばにいることを許して欲しい。

赤の他人の私のために涙を流して、赤の他人の私に生きることを切望したこの人を認めて欲しい。

そんな思いで、私は両親に頭を下げた。

どれくらいの沈黙が続いたことだろう?

「――わかったよ」

そう言った父の声に、私と武藤さんは顔をあげた。

両親は優しく微笑みながら、私たちを見つめていた。

「果南と武藤さんの気持ちはよくわかったわ」

母が言った。

「こんなにも真剣に思ってくれる男がいて、果南は幸せ者だな」

そう言った父の目が潤んでいるように見えるのは、私の気のせいだろうか?

「――お前たちの結婚を認めよう」
< 320 / 350 >

この作品をシェア

pagetop