ヴァニタス
「果南ちゃん、お願いだから俺を許してよ」

そう言って武藤さんは私を抱きしめてきた。

「それが無理なら、俺を温めて?」

「意味がわからないですよ…」

武藤さんは変わった人だったと言うことをすっかり忘れていた。

彼が変わった人だと言うことに気づくのが、どうして私が忘れた頃ばかりなのだろう?

「果南ちゃん」

私の名前を呼んだ武藤さんに、私は彼の首の後ろに自分の両手を回した。

ギュッと抱きしめた後、自分の唇と武藤さんの唇を重ねた。

そっと、武藤さんが大切なものを扱うように私を優しく押し倒した。
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