ヴァニタス
その日も私は武藤さんと手を繋いで、一緒に砂浜を歩いていた。

海からやってくる風は冷たくて仕方がない。

だけど、武藤さんと繋いでいるこの手は温かかった。

海を見ながらの武藤さんとの散歩は、3日に1回の習慣となっていた。

「寒いね」

武藤さんが言った。

「寒いですね」

私は答えた。

「温かくなるのはまだ先ですかね?」

そう言った私に、
「温かくなったら果南ちゃんと一緒にお花見したいね」

武藤さんが笑いながら言った。

「そうですね」

私は笑いながら答えた。
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