ヴァニタス
その時、
「――うっ…」

胸に吐き気が込みあげてきた。

私は手で隠すように口を押さえ、吐き気を押し込んだ。

吐き気はすぐに消えて行った。

「どうしたの?」

私の様子に、武藤さんが顔を覗き込んで聞いてきた。

「えっと、少し吐き気がしただけです」

私は武藤さんの質問に答えた。

「もしかしたら、躰が冷えちゃったのかな?」

そう言った後、武藤さんはコツンと自分の額を私の額に当てた。

「少し熱があるかも知れない…。

今日はもう帰ろうか?」

そう言った武藤さんに、私は首を縦に振ってうなずいた。
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