ヴァニタス
一晩眠ったら治るだろうと思っていたけど、
「果南ちゃん、大丈夫?」

武藤さんが切ったばかりのりんごを私に差し出してきた。

あの日以来から微熱は続き、躰もトイレに行くことすらもしんどいくらいダルくなっていた。

「――いらないです…」

首を横に振りながら言った声は、自分でも驚くくらいに弱々しかった。

そのうえ、何か食べ物を口にしても吐いてしまうと言う状態だった。

「でも少しでも何かを食べないと、躰がつらいだけだよ?

ただでさえ、果南ちゃんは躰が細いんだから」

武藤さんにそう言われて、私は彼が持っているりんごを1口かじった。

口を動かして噛み砕くけど、飲み込むことができない。
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