ヴァニタス
灯油のような匂いの油絵の具が、入ってきた潮風によって消えて行く。

「ああ、お昼過ぎたか」

武藤さんが言った。

「えっ?」

私が武藤さんの方に視線を向けた時、彼はテラスに出ていた。

靴は履いていない。

裸足だった。

「出てきたら?」

そう言った武藤さんに、私もテラスに味を踏み入れた。

もちろん、靴は履いていない。

私も裸足である。

あっ、裸足で歩くのっていいかも。

冷たい地面が裸足に触れて、とても気持ちよかった。
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