ヴァニタス
逃げたくても、足を動かすことができない。

叫びたくても、声を出すことができない。

目の前にいる悪魔に、私は震えることしかできなかった。

「何で、ですか…?

どうして、あなたがここに…?」

そんなことを聞くのは、無駄だ。

この悪魔は、私がどこへ逃げても必ず居場所を突き止めて私の目の前に現れる。

そう、今のように。

「僕が納得すると、思ってるの?

理由もなく別れようなんて言われて、僕が納得すると思ってるの?

どうして別れようなんて言ったんだ?」

悪魔は私に1歩2歩と、近づいてきた。

私は悪魔から逃げるため、1歩2歩と後退りする。
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