ヴァニタス
「――私は…私は、別れるなんて言った覚えなんてありません…。

――そもそも私たちは、つきあってなんかいませんでした…」

震える声で反論しても、無駄なのはわかってる。

「どうしてそんなことを言うんだ?

僕たちは、あんなにも仲がよかったじゃないか。

なのに、君は別れを切り出した。

僕に向かって別れようと言った」

反論しても、悪魔は勝手な勘違いをする。

自分にとって都合のいい勘違いに、私は頭が痛くなるのを感じた。

これ以上反論しても、悪魔に伝わらない。

いや、悪魔に伝わった試しがない。
< 62 / 350 >

この作品をシェア

pagetop