ヴァニタス
なのに、
「――果南ちゃん!?」

突然聞こえたしゃがれた声に驚いたと言うように、それまで私の躰を襲っていた衝撃と痛みは治まった。

「何やってるんだ!?」

武藤さんの登場に、悪魔が私の前から逃げ出した。

代わりにやってきた当人は私の躰を抱きあげた。

「果南ちゃん、大丈夫!?」

悪魔から逃げるために死にたかったのに、このしゃがれた声に止められた。

私は、閉じていた目を開けた。

「――武藤、さん…」

声に出して名前を呼んだ私に、
「――よかった…」

武藤さんは、傷だらけになった私の躰を抱きしめた。
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