ヴァニタス
目を開けると、見なれた天井があった。

油絵の具の匂いに、ここは武藤さんの家なんだと言うことを知った。

「――む、と…さん…?」

当人を見つけるために名前を呼んだら、
「――よかった…。

気がついて、よかった…」

武藤さんは私の顔を覗き込むと、目を潤ませた。

どうして、泣いているんだろう?

そんな私の頭の中を呼んだと言うように、
「果南ちゃんが殺されたんじゃないかって、思ったんだ。

あの時、財布を忘れた果南ちゃんに財布を届けに行こうとしたら、果南ちゃんが男に殴られてる現場に遭遇して…。

それで、果南ちゃんはあの男に殺されたんじゃないかって、不安になってたんだ…」

武藤さんは洟をすすった。
< 66 / 350 >

この作品をシェア

pagetop