ヴァニタス
躰が震えているのは、恐怖からなのか怒りからなのか。

自分でもどちらなのかよくわからなかったけど、
「――ごめんなさい…。

今朝からお腹の調子が悪いので…」

彼からの誘いを、断った。

もちろん、ウソである。

お腹の調子が悪いなんて、断るための口実にしか過ぎない。

「ああ、それは残念だったね」

彼は私に向かって笑いかけた後、手を伸ばしてきた。

「――ッ…」

伸ばしてきた彼の手は、私の頭をなでた。

「お腹が痛いの、治るといいね」

南部はそう言った後、私の前から立ち去った。

バタン

更衣室のドアが閉まった瞬間、私はその場に座り込んだ。
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