スイートナイト
「違うわ」

私は首を横に振った。

「あの人には、巽のことはバレていないわ。

私のことに興味なんてないから、あなたの存在自体知らないと思うわ。

それに、離婚はあなたのせいじゃない」

巽は話を聞くと言うように唇を閉じた。

「巽に出会うずっと前から、あの人との関係は壊れていたようなものだった。

食べたいものややりたいことを何もかも全部我慢して、今まであの人につくしてきた。

だけど…あの人は、私の気持ちなんてわかってなかった。

いつもいつも仕事仕事仕事で、私の話なんてロクに聞いてもくれなくて…」

口に出したら悔しくなって、涙が出てきそうになった。
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