夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「じゃあ、何?浮気?」
 「どうなんだろう?今、わたしたち微妙だから」
 「微妙、ね」ヒロコは梅酒を呷り、「取り敢えず、話してみてよ。わたしに出来ることなら、一肌と言わず、二肌三肌と脱ぐからさ」と言いながら、自分のグラスに氷を追加して梅酒を注いだ。
 「うん。ありがと」
リョウコさんは頷くと、訥々(とつとつ)と話し出した。
 「わたしが今の彼と付き合い始めたのは、大学に入学したばかりの頃だった。その頃のわたしは、何て言うのかな、一種の強迫観念に捕らわれていたような気がするの」
 「強迫観念?」
 「ええ。と言っても、少し大袈裟かも知れないけど、ね。とにかく、何て言うのかな、上手く説明しにくいんだけど、多分、わたし焦ってたんだと思う。大学生になって、色々とやりたい事があって、早く自分の考える〝大学生〟になろうとしてた。今思い返すと、馬鹿みたいなんだけど、多分そうだったんだと思う。だから、よく知らない人と簡単に付き合えたの」
 「そうなんだ。でも、付き合ってもう半年は経つじゃない。彼の事も、大分解ってきたでしょ?」
 「うん。正にそれ。それなのよ」
 リョウコさんは、少しだけ梅酒を呑んだ。
 「というと?」
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