夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「そう。そうなのよ。一方的に別れを告げてもいいんだけど。彼、少し神経質なとこもあって、ね。変に拗(こじ)れて嫌な思いをするのも癪(しゃく)だし、自然消滅を待とうかどうか悩んでるの」
 「神経質か。それは少し面倒だね」
 「ええ。何だか不眠症気味なとこもあるみたいで、よく睡眠薬を飲んでた」
 「睡眠薬ねえ。そういえば、浮気かって聞いた時に、リョウコ少し変だったけど、彼、別に懸想(けそう)する相手がいるんじゃないの?」
 「うん。そうみたい。でも、まだ付き合うとかそういう関係じゃないようだけどね」
 「そっか。でも、それってリョウコを馬鹿にしてるよね。見栄を張り続ける為の保険ってことでしょ」
 「それは解ってるんだけど、ね。わたしも同じような理由で付き合い始めたんだし、人の事は言えないよ」
 「そっか。それでどうするの?」
 「うーん。取り敢えず様子見、かな。どうせこのまま別れるだろうし」
 「まあ―」ヒロコは梅酒を呷る。「何かあったら、いつでも言ってきて。わたしたちに出来ることなら、力になるし。ねえ?」
 静観を決め込んでいたぼくに、ヒロコは同意を求めてきた。
 「ええ。ぼくに出来ることなら」
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