夜明けのコーヒーには 早すぎる
こうすると、酔いにくくなるといわれているらしいが、本当かどうかは判らない。ただ、この呑み方は癖になる。
 「了解ー。そいじゃあ、待ってるね」
 ヒロコはそう言って電話を切ると、携帯電話をテーブルの上に置いた。
 「誰か来るのですか?」
 「うん。リョウコが呑みたいって」
 「そうですか。しかし、もう遅いですけど、足はどうされるんですか?まさかタクシー?」
 「だろうね。何だか嫌なことがあったみたいで、少しぶっきらぼうな口調だったから、ね。愚痴を零(こぼ)したいのか、はたまた酒に酔いたいのか」
 「その両方かも知れませんし、ね」
 「そうだね。まあ、この前のことに関係するかも知れないし、愚痴ぐらいなら、わたしたちで聞いてやろうか」
 「そうですね」
 ぼくは日本酒を呷った。

 十数分後、リョウコさんはヒロコの部屋に入ってくるなり、どかりと胡座(あぐら)をかいて、目の前にあったぼくのお猪口を一気に呷った。そしてそのまま、手酌で二杯目を注ぎ、再び呷ると、長い溜め息を吐いた。
 「それで―」ヒロコは日本酒をチビリ。「何があったの?」
 「ほんと最悪。何がしたかったのか解んない」
 リョウコさんは吐き捨てるように言った。
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