夜明けのコーヒーには 早すぎる
 はてさて、ヒロコのことが気になるが、一体どう聞いたものかと、ぼくが頭を悩ませていると、
 「カトウ先生。何かあったのですか?」
 ユリさんが開口一番に言った。
 「ヒロコがどうかしたのですか?」
 内心困惑しつつも、ぼくは平静を装って言った。といっても、自分では装えたかどうかは怪しいものだ。
 「いえ、何だか最近、先生の様子が少し変なのです」
 「変、というと?」
 「何と言いますか。その―」ユリさんは、頬をぽりぽり。「心ここにあらずといった様子で、何だかぼーっとしています」
 「ぼーっと、ですか」ぼくは、ホットコーヒーを一口啜る。「二日酔い、ということは?」
 「わたしも最初はそう思ったのですが、流石に毎日となると、違う気がしてきまして」
 ユリさんは、ミルクティーを一口啜った。
 「成る程。実はこのところ、ヒロコと呑んでいないので、少し気になってはいたのですよ」
 「えっ!」ユリさんは目を見開く。「そうなのですか?いつも一緒に呑んでいらっしゃると、姉さんに聞いたのですが」
 「まあ、否定は出来ませんがね」ぼくは、つい破顔してしまう。「でも、ここ最近は、行きつけの「ロンド」にも顔を見せてませんよ。ヒロコは」
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