夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「えっ、あっ」
 ヒロコは混乱し、咄嗟に言葉が出てこない。
 「わたし、真剣です」
 その言葉は、ユリの眼差しが証明していた。
 「卒業前に、どうしても伝えたくて。ただ、伝えたくて。でも、どうしたらいいか解らなくて。返事が聞きたいとかじゃないんです。知ってもらいたかったんです!」
 ユリはそれだけ言うと、ヒロコの部屋を飛び出した。
 「ま、待って!ユリさん!」
 ヒロコは立ち上がった。だが、立ち尽くすだけだった。
      ※
 「―という訳なの」
 ヒロコは話し終え、焼酎を呷る。
 「成る程。事情はよく解りました」
 ぼくは冷酒をちびり。
 「どうしたらいいの?」
 ヒロコはそう言って、大きな溜め息を吐いた。
 「難しいですね」
 「うん」
 「ヒロコ。少々不躾なことを聞きます」
 「何?」
 「ヒロコの勤める女子高では、こういうことはよくあるのですか?」
 ヒロコは「う~ん」と少し唸った後、「無きにしも非(あら)ず、かな」と言った。
 「そうですか。恋愛は自由ですからね。当人同士が納得しているなら、第三者が口出しすることではありません」
 「うん。わたしもそう思う。でも、校内でのそういう出来事は、殆どが憧れの延長線上なの」
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