夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「というと?」
 「疑似恋愛に近い感じかな。格好がいい上級生にラブレターを送ったり、バレンタインにチョコを渡したりはするけど、それより深く親密になる生徒は稀なのよ」
 「成る程。で、ユリさんという生徒は真剣だと思うのですね?」
 「ええ。そう思うわ」
 「では、こちらも真剣に答えるしかないのではないのですか?」
 「うん。わたしもそう思う」
 「決まりましたね。一つずつ順に、気持ちの整理をしていきましょう」
 「うん」ヒロコは頷く。「そうするわ!」

 ぼくとヒロコは気を取り直し、摘まみを山ほど注文する。焼酎も瓶とチェイサーごとキープした。
 改めて乾杯した後、ぼくは焼酎を一口呑んで、「ユリさんの気持ちがはっきりしている以上、ヒロコの気持ちをはっきりさせることにしましょう」と言った。
 「ええ」ヒロコは頷き、焼酎をゴクリ。「そうね」
 「では先ず、ヒロコはユリさんのことをどう思っていますか?」
 「う~ん」ヒロコはタコわさをパクり。「仲の良い生徒、かな」
 「というと、教師と生徒という以上の感情は、持ち合わせていないのですか?」
 「それは―」ヒロコは焼酎の水割りを作って、かき混ぜる。「正直解らない。少なくとも、今は一生徒として見てる」
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