夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「んーおはよー」
 ヒロコは気怠そうに返事を返すと、浴室に入っていった。
 ぼくは、ヒロコの為に濃いめのコーヒーを淹れることにする。
 数分後、シャワーを浴びて出てきたヒロコに、コーヒーを差し出した。
 「サン、キュッ」
 ヒロコはコーヒー受け取り、啜り始めた。
 コーヒーを飲み終えると、「カドちゃん」ヒロコがぼくを呼んだ。
 「どうしました?」
 「昨日言ってた事、今からお願い出来る?」
 「あなたの思うままに―」
 ぼくは仰々しくお辞儀をした。

 ユリさんは、聞いていたよりも美人に見えた。
 ぼくは、不覚にも少しの間、見惚れてしまう。
 「彼女が、言っていたユリさん」というヒロコの言葉で、ハッと我に返る。
 「初めまして、カドカワです」
 ぼくは内心の動揺を、表に出さずに言った。
 「こちらこそ、初めまして」
 ユリさんは、白い頬をほんのりと赤らめて、お辞儀をしてくれた。
 「ユリさん。あなたを呼び出したのは、他でもないわ、昨日の事でなの」
 ヒロコがそう告げると、「はい」ユリさんは消え入りそうな声で返事をし、そっとぼくの方を見た。
 それに気付いたヒロコは、「カドちゃんなら、大丈夫。ユリさんには悪いと思いつつも、事情は話してあるの」とユリさんにゆっくりと優しく話した。
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