自己愛ラブレター
さようなら、“真っ白な花”
初めまして、“真っ白な花”
フランスにいる私のところに、一通の手紙が届いた。
それは、兄と薫さん、そして娘さんの3人の写真。
中心には、可愛らしい赤ちゃんが写っていた。
私は、手紙の返事を書き、端っこに真っ白な花をちょこんと描いた。
真っ白な花は一輪、ちゃあんと花を咲かせたのだ。
私は、思い出す。
何色にも染まる真っ白な花、
でも、その元は真っ白で。
儚く散る一時の美しさは、
まるで人間の人生のよう。
真っ白な花は、人間なのだ。
必死で咲いた、一輪の花なのだ。
11月12日で終わっていたお父さんの日記。
でもその7ページ後に記された、お父さんが書いたであろうメッセージ。
7ページ後は、11月19日。
そのちょうど1ヶ月前に、お父さんは余命を宣告された。
お父さんは、生きるつもりでいたのだ。
ちゃんと、1ヶ月。
でも、叶わなかったのが現実。
叶えたかった夢は、夢のまま終わってしまった。
“さよなら、一輪の真っ白な花”
これは、お父さんが自分に宛てたメッセージ。
必死に咲いた花へのメッセージ。
私もまた、一輪の真っ白な花。
──fin.