自己愛ラブレター
それから、4年が経った。
家族が1人、増えた。
「お父さん、初めまして。薫と申します」
そう丁寧に挨拶をしたのは、兄がお付き合いをしている薫さんだ。
兄が大学で知り合い、猛アタックのおかげで付き合うことになったらしい。
もう2年半と長いお付き合いとなり、卒業と同時に籍を入れる予定である。
母も、妹も、そして私も薫さんを気に入り、晴れて家族に仲間入りを果たすことになった。
おかげで、今回の墓参りは少しばかりか雰囲気が明るい気がする。
薫さんは二言ほどお父さんに何か伝え、ゆっくりと立ち上がってこちらを振り返った。
「お父さんに、挨拶させていただきました。」
微笑みながら言う薫さんはとても綺麗で、兄には勿体無い。
そういえば、何故兄がいいのか、と興味本意で尋ねたことがあった。
その時、薫さんからは「あの人、今でも何かに悩まされているみたい。何か知ってる?」なんて答えが返ってきた。
私は答えが無いことを気にせず、真っ先に浮かんだ手紙のことを言おうとした。
でも、何か言ってはいけない気がして「わからない」と話を終わらした。
でも私はその会話で、何と無く察した。
多分、薫さんはそれなりにしっかりしている兄を上手く支えれるだろう。
きっと、これが“ぴったり”な2人なのだ。
私はそんな兄を少し羨んだ記憶がある。
きっと、私達家族にとって薫さんは必要な存在だ。
お父さんがいなくなってからここ数年塞ぎこんでいた母も、最近は笑顔が増えてきた。
薫さんは母のことも何気に支えている。
本当に素敵な人だ。