自己愛ラブレター
「そうそう、薫ちゃん。この手紙、読んでみてくれる?」
家に帰ってから、母がお父さんの手紙を薫さんに渡した。
え、私はあえて黙っていたのに、そんなあっさりと……
なんて、母の突然の行動に驚きながらも、薫さんならまぁいいか、と思ってしまう。
「手紙、ですか?」
どこか不安そうに手紙を受け取る薫さんに、母が説明する。
「お父さんが最後に残した手紙なんだけどね、訳がわからないの。全く何を考えていたのやら」
くすくすと、笑いながら母は言った。
「そう、ですか……」
なんて、簡潔な返事をして、薫さんは手紙に目を通す。
そして、少し考える素振りを見せると、
「真っ白……うーん……」
と唸った後、何かわかったのか顔を上げた。
「真っ白な花……花言葉、ですかね?」
それを聞いて、私は違う、と声に出さずに反論した。
お父さんは花言葉なんか知らないし、興味がない……はずだ。
でも、それを聞いた母が、
「花言葉は、考えなかったわね。調べてみましょうか」
と提案した。
……そうだ、いろんな視点から見ることは大切なのだ。
確かに、私達家族は花言葉なんて思い付かなかった。
お父さんを知らない薫さんだから、そういう発想に辿り着く。
「私、ちょっと探してみるね」
妹がその場を離れた。
多分、中学生になって恋愛だのなんだの言っていた時に買った花言葉も載っている図鑑だろう。
現在は全く活用されていないから、何処かから引っ張り出して来るはずだ。