あたし、猫かぶってます。


 とりあえず、早瀬は部屋着に着替えて。

 着替えて終わった早瀬と掃除機をかけて、本棚を整理して、ゴミを拾って、CDを揃えて、ーーとにかく一時間くらいかけて2人で掃除をした。


 「…終わった。」

 早瀬は、ソファーに座り、一息。


 ーーーガチャッ

 「朔ー、帰ってる?」

 タイミング良く聞こえる、男の人の声。これが噂の遼くんなのだろうか。


 「部屋に居るー。」

 掃除したせいか、ダルそうな声でそう言う早瀬。

 そして、階段をゆっくり上ってくる音。初対面だし、それなりに緊張。遼くんがブサメンだったらどうしよ。

 なんて考えながら、扉を凝視。


 ーーーガチャッ

 「朔ー、って何この部屋。綺麗なんだけど。」

 茶色い髪にゆるふわパーマ。左目には泣きボクロ。ブサメンとか想像していて、ごめんなさい。


 「え、朔の彼女!?」

 あたしを見て、驚いたように早瀬を見る遼くんさん。(イケメン)イケメンだからさん付けしちゃう。


 「あー、まぁ、そんなとこ。」

 軽く笑いながらあたしの頭を撫でる早瀬。いやいや、なに堂々とウソついちゃってんの。


 「…友達です。」


 「ま、今は友達なんじゃね?」

 誤解されるようなことを言わないで欲しいよね、全く。


 「ま、いいや。俺、槙村遼って名前だから、適当に呼んで。」

 槙村遼…槙村…槙…


 「じゃあ、マッキーさんで。あたしは早瀬結衣です。」


 「へ!?」

 あたしがそう呼んで自己紹介すれば、明らかに動揺するマッキーさん。


 「なんか変なこと言いましたか?」


 「や、彼女も俺のこと、マッキーって呼ぶからさ。」

 なんて。照れながらノロケるマッキーさん。彼女居たんだ。きっと彼女もあたしみたいに可愛い子なんだろうな。


 「てか、結衣も西中だし、確か遼くんちの近くだから帰り送ってあげて。」

 さりげなく、マッキーさんにそう言う早瀬。何気に気が利くところとか、なんかムカつく。


 「結衣ちゃん西中なの?西中で3コ下ってことは、妹の後輩かぁ。」


 「妹?」

 マッキーさん、妹居るんだ。


 「槙村千佳って言うんだけど、知ってたりする?」


 「っ!?…千佳さん?」

 知ってるもなにも、あたしが唯一大好きだった先輩。そして、


 「大好きだった先輩です。あたし千佳さんに憧れて、今の学校に入りましたもん。」

 千佳さんに会いたくて、ここを受けたんだもん。妹ってことは、マッキーさんは千佳さんのお兄さん?


 でもマッキーさんと千佳さん、どっちも整った顔立ちだけど全く似てないしーーーダメだ、混乱してきた。


< 118 / 282 >

この作品をシェア

pagetop