あたし、猫かぶってます。
とりあえず、早瀬は部屋着に着替えて。
着替えて終わった早瀬と掃除機をかけて、本棚を整理して、ゴミを拾って、CDを揃えて、ーーとにかく一時間くらいかけて2人で掃除をした。
「…終わった。」
早瀬は、ソファーに座り、一息。
ーーーガチャッ
「朔ー、帰ってる?」
タイミング良く聞こえる、男の人の声。これが噂の遼くんなのだろうか。
「部屋に居るー。」
掃除したせいか、ダルそうな声でそう言う早瀬。
そして、階段をゆっくり上ってくる音。初対面だし、それなりに緊張。遼くんがブサメンだったらどうしよ。
なんて考えながら、扉を凝視。
ーーーガチャッ
「朔ー、って何この部屋。綺麗なんだけど。」
茶色い髪にゆるふわパーマ。左目には泣きボクロ。ブサメンとか想像していて、ごめんなさい。
「え、朔の彼女!?」
あたしを見て、驚いたように早瀬を見る遼くんさん。(イケメン)イケメンだからさん付けしちゃう。
「あー、まぁ、そんなとこ。」
軽く笑いながらあたしの頭を撫でる早瀬。いやいや、なに堂々とウソついちゃってんの。
「…友達です。」
「ま、今は友達なんじゃね?」
誤解されるようなことを言わないで欲しいよね、全く。
「ま、いいや。俺、槙村遼って名前だから、適当に呼んで。」
槙村遼…槙村…槙…
「じゃあ、マッキーさんで。あたしは早瀬結衣です。」
「へ!?」
あたしがそう呼んで自己紹介すれば、明らかに動揺するマッキーさん。
「なんか変なこと言いましたか?」
「や、彼女も俺のこと、マッキーって呼ぶからさ。」
なんて。照れながらノロケるマッキーさん。彼女居たんだ。きっと彼女もあたしみたいに可愛い子なんだろうな。
「てか、結衣も西中だし、確か遼くんちの近くだから帰り送ってあげて。」
さりげなく、マッキーさんにそう言う早瀬。何気に気が利くところとか、なんかムカつく。
「結衣ちゃん西中なの?西中で3コ下ってことは、妹の後輩かぁ。」
「妹?」
マッキーさん、妹居るんだ。
「槙村千佳って言うんだけど、知ってたりする?」
「っ!?…千佳さん?」
知ってるもなにも、あたしが唯一大好きだった先輩。そして、
「大好きだった先輩です。あたし千佳さんに憧れて、今の学校に入りましたもん。」
千佳さんに会いたくて、ここを受けたんだもん。妹ってことは、マッキーさんは千佳さんのお兄さん?
でもマッキーさんと千佳さん、どっちも整った顔立ちだけど全く似てないしーーーダメだ、混乱してきた。