あたし、猫かぶってます。


 「早瀬、近い。」

 ちゃっかり顔を近付けてくる早瀬を上手く避けながら、顔をしかめて抗議する。


 「いいじゃん、今居るのは俺だよ?」


 よくないわ、バカ。

 かっこいいからって調子乗ってちゃっかり抱き締めたりするの、良くないよね。


 「離れてください。」


 「…なに、ツンデレ目指してんの?」

 さっきと違って余裕な態度の早瀬。かっこいいけどちょっとムカつく。


 「離れろバカっ、」

 そう言って早瀬のお腹を殴れば、しぶしぶあたしを離してくれた。…ドキドキし過ぎて、やばい。



 「顔に俺が大好きって書いてんぞ。」

 ニヤリと笑った早瀬は、そう言ってあたしのおでこを軽く突く。

 うざ。なにこいつ。ーーー好きだけど。


 早瀬はあたしの気持ちを見透かしているかのように、得意気な顔で言うから、ちょっとギクッとしてしまった。



 「超、嫌い。」

 見透かしていようと、なんとなく言っていようと、あたしは素直になんてなれるはずもなく、嘘をつく。




 それから、早瀬と和んでいたあたし。

 「ーーー結衣?まだ居る?」


 突然廊下から聞こえたその声で、一気に我に返る。





 「遅れてごめん、帰ろ?」

 笑顔で教室に入ってきたのはーーー奏多、だった。


< 177 / 282 >

この作品をシェア

pagetop