あたし、猫かぶってます。
「早瀬、近い。」
ちゃっかり顔を近付けてくる早瀬を上手く避けながら、顔をしかめて抗議する。
「いいじゃん、今居るのは俺だよ?」
よくないわ、バカ。
かっこいいからって調子乗ってちゃっかり抱き締めたりするの、良くないよね。
「離れてください。」
「…なに、ツンデレ目指してんの?」
さっきと違って余裕な態度の早瀬。かっこいいけどちょっとムカつく。
「離れろバカっ、」
そう言って早瀬のお腹を殴れば、しぶしぶあたしを離してくれた。…ドキドキし過ぎて、やばい。
「顔に俺が大好きって書いてんぞ。」
ニヤリと笑った早瀬は、そう言ってあたしのおでこを軽く突く。
うざ。なにこいつ。ーーー好きだけど。
早瀬はあたしの気持ちを見透かしているかのように、得意気な顔で言うから、ちょっとギクッとしてしまった。
「超、嫌い。」
見透かしていようと、なんとなく言っていようと、あたしは素直になんてなれるはずもなく、嘘をつく。
それから、早瀬と和んでいたあたし。
「ーーー結衣?まだ居る?」
突然廊下から聞こえたその声で、一気に我に返る。
「遅れてごめん、帰ろ?」
笑顔で教室に入ってきたのはーーー奏多、だった。