あたし、猫かぶってます。


 「奏…っ「ーー奏多。」

 あたしの声を遮って、奏多を呼んだのは、早瀬。なんで呼んだのかなんて、あたしにも分からない。


 「無理矢理消すの、やめた。」

 フッと笑いながら、奏多にそう言えば、奏多は全てを理解したかのように、ちょっと切なげな表情でーー笑う。


 「結衣と、話せたみたいだね。」

 なんとなく奏多の顔を見るのが怖くて、あたしは俯きがちに足元を見る。


 「ん。話した。」

 そう言って、あたしの背中をポンと叩く早瀬。まるで俯くな、とでも言うかのような力強い早瀬の力にーーー覚悟を、決める。



 「ごめん、奏多。あたし、自分に嘘ついていた。」

 忘れたふりして奏多の隣に居るくせに早瀬のことを考えていて、中途半端に付き合っていたのは、あたしだ。



 「ーーー知ってたよ、」

 笑いながら、あたしの頭をポンポン叩きながら笑う奏多。


 奏多が優しいから、傷付けたくないからって、ずっと自分を説得していた、あたし。奏多はいつから気付いていたんだろう。

 いつからあたしは奏多に無理をさせていたんだろう。


 「あ、言っとくけど無理とかしてないから。」


 「え?」



 「結衣のことなら、一番分かっている自信があるから、結衣が言いたいことも分かるよ。」

 ーーーー奏多……



 「まぁ、単刀直入に言えば、絶対に別れないけど。」


 ーーーふわり。



 優しい、体温があたしに伝わる。


 って、……え?



 「奪ってみなよ、朔くん。」

 ニヤリと笑った奏多が、優しくあたしにーーーキスをした。



< 178 / 282 >

この作品をシェア

pagetop