ここに在らず。
「!、サエ様⁈ 」
その声はいつもの使用人の方の声だと思ったけれど、それ以上に考え事が出来ない。頭がグラグラして地面が揺れて感じる。身体に力が入らない。そしてポロポロと頬に流れる…あぁこれは、私は、また泣いている。
「とにかく、一度お部屋に…!」
「歩けますか?」私を支えながら尋ねる彼に返事をしたのかは覚えていない。それでもそのままベッドへと連れて行かれて横になり、玄関の扉が閉まる音が聞こえると何故か嘔吐感は和らいだ。
外に出なくていいんだ。
その時私はそれが分かって、安堵のような気持ちを抱いたと思う。そして鍵のかかる音がすると、私は張り詰めていた何かが切れた。
ここに居ればいいんだ、ずっとここに居れば…そうすれば……
そう思いながら、私は目を閉じた。