ROMANTICA~ロマンチカ~
涼輔は、小さく会釈を返しながらも、



チクリ……



胸の奥にかすかだが、焼けるような痛みを感じた。



涼輔の母親は、彼が三歳の時に他界した。

もともと体が弱かったと聞いている。


抱いてもらった記憶は、あまりない。 

 
心の奥底に封じたはずの傷が開き、今にも血を流し始めそうだ。


急いで冷たい無表情の仮面の下に逃げ込み、涼輔はつぶやいた。
 
「バカバカしい」

 
表には、運転手を待たせてある。 
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