ROMANTICA~ロマンチカ~
ママだって、最初から「鉄の女」だったわけじゃない。


パパが死ぬまでは、良き妻であり良き母ではあったけれど、手に職のない「普通の女」だったママ。

 
パパが起こした会社の業績は悪くなかった。


だけどパパの死はあまりにも早すぎて、会社はまだ色んな意味で幼弱だった。



ママが、パパから受け継いだ会社の経営を軌道に乗せるべく日々奔走し、

まだ小さかったあたしを養って行くのにどれほど苦労し、

どれだけの回数涙を流し、

文字通り血が出るような苦労をしてきたかということ……


ママの一番側にいたあたしには良くわかる。

痛いほどに。
 

どれだけフェミニストの人たちが男女同権を叫び、

男たちがそれにおもねる形で「男女雇用機会均等法」なんかを作ってくれたところで、

この社会で手に職のない女が一人で生き、

ましてや女手一つで子供を育てるなどということがどれほど大変か……

ってことは、ママの口癖みたいだった。

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