ROMANTICA~ロマンチカ~
だけど、一人でいられるのが幸いだった。

ママは一昨日から出張している。

出張は一週間の予定だから、当分ママは帰ってこないだろう。それまでには、立ち直ることができるかしら?
 
予備校には、あれから行っていない。
 
眠っていないけれど、全然眠くならない。

ペットボトルの烏龍茶以外に何も口にしていないけれど、全然お腹が空かない。

お酒を飲めば、いい気分になれるのだろうか? 
だけど、一人でヤケ酒する甲斐性はあたしにない。これって、ダイエットにはいいかも。
 
電話はしつこく鳴っていたけれど、無視した。
 
このまま、あたしという存在が、誰に省みられることなく消えてなくなってしまうことができたら、どんなにかいいだろう。
 

涙は出ない。

本当に悲しい時、簡単には泣けないものだね。
 

まったく、不愉快だ。

塞ぎこんでいる自分がバカバカしくて、みっともなくて、大嫌い。
 

家の前に車が停まる音。
けたたましい音を立て、玄関が開く。

空き巣かな、強盗でも悪くない。もう、どうだっていい。
 

「都季、あんた何やってんの! 大丈夫?」
 
ママだった。 
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