ROMANTICA~ロマンチカ~

6.車中にて

外では氷室家の黒塗りのロールス・ロイスが待っていた。

執事の原島さんが恭しくドアを開ける。手が少し震えていた。
 

原島さん、大事な涼輔さんのことをどんなに心配していたことだろう。

そう思うと、何だか申し訳なくて、小さくなって消えてしまいたかった。
 

「お二人とも御無事で何よりでした。

どうもありがとうございました」
 

ヤナギヤさんにお礼を言って、深々と頭を下げた。
 

「後日、請求書を送りますよ。

高くつくので、覚悟しておいて下さいね」
 
涼輔さんに言って、ヤナギヤさんは去って行った。 
 

この日の原島さんは、言葉少なだった。
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