ROMANTICA~ロマンチカ~
「涼輔君、怒るぞ」
 
「やり過ごすさ。

じゃ、こうしよう。不測の事態が起こって都季ちゃんが一人になってしまった時に限って、涼輔との婚約が効力を発揮する。

双方には拒否権がある。

どうだ、おまえの会社ごと、都季ちゃんの面倒をうちで見るというのは? 

保険はかけておくものだぜ。万が一に備えてかけてさえおけば、万が一の事態はやって来ない。これが俺の人生哲学」
 
「さすが、やり手だな」
 

損になることは、決してしない。それが、氷室優だ。
 

「婿養子ですから。

やり手じゃないと、肩身が狭くてね。おまえも会社の方、上手く行っているようじゃないか」
 
「ボチボチな」
 
「ハハ! 書類を作ろう。弁護士を呼ぶ」
 
千住忠信が飛行機事故でこの世を去ったのは、それから一ヶ月後のことだった。
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