ROMANTICA~ロマンチカ~

10.よみがえる過去

事の真相はこうだった。
 
四歳の夏、パパのお友達の家の持ち物だという軽井沢の別荘(つまり氷室家)にお呼ばれした時のことだ。
 


皇室の御用邸に匹敵するような広大な敷地を持つ別荘には……

お手伝いさんがたくさんいて、

他にも色々なおうちの人が呼ばれていて、

招待客の中には武藤病院院長の武藤医師もいた。
 


別荘にいた子供は、当時十一歳の涼輔さん(そのころは涼輔くんと呼ばれていた)と、あたしだけだった。

 
涼輔くんは、大人たちからメチャクチャちやほやされていた。


内心それを迷惑がっていたのかもしれないけど、そんなことを顔に出さないような、良くできた子供だった。


四歳のお子様だったあたしにも優しくしてくれたけれど、あたしは涼輔くんが嫌いだった。
 

「まあ、何てお行儀がいいんでしょう」
 
「学校でも成績優秀なんだってね」
 

パパとママが自分以外の子供に優しくするのを、基本的に子供は好まない。
< 267 / 369 >

この作品をシェア

pagetop