ROMANTICA~ロマンチカ~
「……そ、そんな……ダメですよ。だって、あたし……」
 
「おまえに拒否権は認めない」
 
「そうじゃなくって……だって……」
 
「まだ気にしてるのか?」
 


ギプスが巻かれた右足を持ち上げる。
 


「それもあるけど……」
 
「私は、最初から気にするなと言っている。

だが、おまえが気にしたいのをやめさせることはできない。

いつまでも、気にしていろ。もう、痛みも腫れも引いた。

感謝してるくらいだ。ケガしたおかげで、何年ぶりかでこんなに長い休みも取れた。

自我の解放とやらもできたし。……ほら、杖なしでも平気だ」
 


二本の松葉杖を浮かせて、両足で立ってみせる。
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