ROMANTICA~ロマンチカ~
「人殺しの血が流れていると思う。

多分。

私の家は昔、大名だったからな。

そこまでのし上がるには、さぞかし血生臭い歴史があっ
たことだろう。

人をたくさん斬って、怨念もたっぷり吸ってるだろうな。

あんまり考えたくないけど」
 


気持ち良さそうに潮風を吸いこむと、
 


「なあ都季、柔軟に考えよう。

今という時間は、過去の歴史の上に成り立っているわけだろう。

過去には平和でいい時代もあったかもしれないが、大半はそうじゃなかったはずだ。

血生臭い時代の方が、ずっと長かったはずだ。

生きるために、人を殺めることもあっただろう、死人の肉を喰わなければならない時だってあったかもしれない。

どんな人間でも、その先祖の中に一人や二人は盗人だっているだろう、人を殺したことのある人間だっているだろうさ。

大名も旗本も、武士も町人も、農民だろうが坊主だろうが、変わりはないはずだ。

完全にけがれ無き人間などいないはずだ」
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