キケンなアイツとの生活
「千夏さん…」
「……うん?」
「冬弥さんの言ったことは、ホント…?」
「え?」
「オトコの人は、それ以上のこともしたくなるの?」
「それは……」


千夏さんは、言葉に詰まると、わたしから目をそらした。


「オンナの人もそうなの?わたしが変なの?」
「それはチガウわ。愛梨ちゃんは変じゃない。人にはその人のペースがあるでしょ?愛梨ちゃんは、ゆっくり進めていけばいいの」
「……うん」


そうは言ってくれたけど、きっとわたしがダメなんだ。恥ずかしいとか、そんなこと言ってたら、冬弥さんに嫌われちゃう…。


「千夏さん、わたし学校行く準備するね…」
「愛梨ちゃん…」


きっと千夏さんは、わたしにまだ言いたいことがあったはず。だけど、多分わたしになにを言っても聞いてもらえないと思ったのか、わたしの名前だけ呼ぶと、それ以上はなにも言ってこなかった。


「おはよ、パパ」
「あぁ…愛梨、おはよう」


リビングへ行くと、冬弥さんはもう朝ごはんを食べていた。それを横目に、わたしは洗面所へと行く。


なんか、目を合わせるのもツライなぁ。昨日は幸せ全開だったのに、こんな些細なことで、こんなことになっちゃうなんて…。


「いただきまぁす」
「愛梨ちゃん、美味しい?」
「うん、とっても。千夏さん、いつもありがとう」


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