My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



「お支度を」



同じく瞳を輝かせた俺を見て、クスクスと笑ったグレイス


そして、小さく膝を折ってから

静かに部屋を出て行った









グレイスに連れられて、初めて建物の外に出る


眩しいほどの太陽の光が、俺を包む

そして胸いっぱいに広がる緑の香り




アネモスの国は、本当に美しかった―――




瑞々しい緑が、どこに目を向けても生い茂り

柔らかな水は、惜しみも無くこの国を潤す



目を閉じれば、小鳥のさえずりが聞こえ

建物は皆、白く輝く



それでも、どの建物も新しく造られたものではなく

祖先が建てた建物を大切に受け継いでいるのが分かった



そして、そこに住む人々は

皆美しく、まるで天の使いの様だった



民も皆、薄い白の衣を身に着け

風になびく髪は、絹の様に長く美しい

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