My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ
「お支度を」
同じく瞳を輝かせた俺を見て、クスクスと笑ったグレイス
そして、小さく膝を折ってから
静かに部屋を出て行った
◇
グレイスに連れられて、初めて建物の外に出る
眩しいほどの太陽の光が、俺を包む
そして胸いっぱいに広がる緑の香り
アネモスの国は、本当に美しかった―――
瑞々しい緑が、どこに目を向けても生い茂り
柔らかな水は、惜しみも無くこの国を潤す
目を閉じれば、小鳥のさえずりが聞こえ
建物は皆、白く輝く
それでも、どの建物も新しく造られたものではなく
祖先が建てた建物を大切に受け継いでいるのが分かった
そして、そこに住む人々は
皆美しく、まるで天の使いの様だった
民も皆、薄い白の衣を身に着け
風になびく髪は、絹の様に長く美しい