マッタリ=1ダース【1p集】

第53話、私vs国連

 私が国連と対峙したのには、それなりの理由がある。ある日突然左足だけに起こった現象について、誠意ある回答をしてこなかったからだ。

 歩くだけで、靴下が土踏まずに向かってシワになる。すっぽりとクルブシを乗り越えて、輪っかを嵌めているかのように溜るのだ。

 右足では起こらないこの怪現象。靴下はメイドインチャイナ。

 国際的な陰謀に巻き込まれた今、私が頼れるのは国連しかなかった。なのに、である。国連は私を失望させた。もはや私が世界を束ねる他にない。

 私は靴下から培養、採取したクッサイウィルスを、インターネットを介してばら蒔き、国連ならびに世界を機能不全に追い込むことに成功する。

 だが代償も大きかった。居場所がバレたのだ。セカチューが好きだった私は、直ちにエアーズロックまで逃げたのだが、呆気なく追い詰められてしまった。

 UNマークの着いた戦車が迫る。その後ろにヘリコプター。当然、衛星も私を捉えている。

 もはや逃げ場はない。しかし、私は戦う前に彼らに警告したのだ。

「私を敵に回すこと、それ即ち、人類の終焉」であると。

 さあ、撃ってみろ。そして思い知るがいい。その愚かさを晒け出し、苦悩するのだ。

 私は白いTシャツにジーンズ姿だ。背中にはハッキリとこう書かれている。

「地球」

 お前たち国連は母なる地球を葬る事が出来るのか?

 最後のクッサイ菌は、私自身の中に封じ込めている。地球の大気を奪うだけの威力がある。

 左足だけ、靴下が土踏まずに溜っている。歩く度に気色悪いし、だからと言って立ち止まりでもしたら、人の流れの中でひとたまりもなく掻き消されてしまう。

 ──本当に居心地の悪い世の中に生まれたものである。世界を敵に、大立ち回りをしてみたい。

 武器は?
 靴下クッサイ菌。

 舞台は?
 エアーズロックがいい。辿り着く前に灰を撒いた、あの場所だ。

 目指すは地球の平和。
 人類共存の精神。

 吊革を二本重ねて、その輪っかから外を覗く。権威主義にはほとほと愛想が尽きていた。

 その日の晩、焼酎にレモンを搾り、きゅっと奥歯を噛んだ。消費税が身に染みる。

 何だかな……と思うと、急にやりきれなくなった。

 この世界は、私たちで出来ている。
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